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【 第15話 】勝利へのスタートライン

こうしてチームとして、優秀、かつ曲者ともいえる選手が集結した。

 

 

そして、そんな選手たちの気持ちをいつも支え続けてくれていたのが、福智町の存在だった。Vリーグ申請の見送りとほぼ時期を同じくして、2021年の8月にフレンドリータウン協定を結んでいた福智町が、正式に「ホームタウン」となる話が出始めていた。

 

 

それはつまり、KANOA福岡の拠点を完全に福智町へ移し、選手もそのまちを拠点に暮らすということ。選手としては、毎日の練習場所がちゃんと確保でき、当時よりもバレーに集中できる環境になることを意味していた。その時点ではまだ雇用スポンサーは決まっていなかったが、近隣で就職先を確保するなどすれば、長距離移動もなくなり、日々の練習環境は格段によくなる。

 

 

“次の1年は、今よりはバレーに集中できる環境でVを目指せるかもしれない”

 

 

福智町ホームタウン化の話が出たことは、Vリーグ入りを逃して落胆の渦中にあった選手たちにとって、明るい未来を描かせてくれる光だった。

 

 

そしてついに2022年3月30日、福智町とホームタウン協定を締結。4月1日にコーチ、選手含めた3名が福智町地域おこし協力隊として任命される。新たな一歩を踏み出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

同じころ、Vリーグ入りに対してネックとなっていた福岡県内の悪い噂も、森が関係者に事実を伝えて誤解をといて回ったことで、ようやく下火になりつつあった。それまではどこへ行っても、前の運営陣の印象や、事実無根の出来事が、あたかも事実のように広まっていたのである。

 

 

これでようやく、堂々とVリーグ入りを目指せる土壌が整った。

 

 

周囲から「めちゃくちゃなチーム」と冷ややかな視線を浴びてきたKANOA福岡にとって、これらの問題が公式に解決したことは、大きな前進だった。

 

 

一時は4社になったスポンサーも、一社、また一社と応援してくれる企業が増えてきた。資金以外にも、練習中に消費される飲料水の提供や、ユニフォームや練習着の提供、福智町の温泉施設では温泉に入りたい放題、ラーメン食べ放題の特典など、福智町内外から数々のサポートを受けられるようになっていった。

 

 

応援してくれる存在が増えることは、選手たちにも大きな励みだ。

 

 

なかでも特筆すべきは、2022年度から選手全員の雇用スポンサー、かつメインスポンサーとなってくれた2社の存在である。

 

 

この2社が選手全員の雇用を引き受けてくれたおかげで、選手たちは日中も含め、毎日をバレーボールに集中して過ごすことができるようになった。

 

 

日中からこれほどバレーに集中できるこの幸運な待遇は、1年前では想像もできなかった。毎日の過酷過ぎるスケジュールに疲労困憊の日々を送っていた選手たちは、そのありがたみをしみじみと、噛み締めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

長距離移動続きの日々に意識が遠のき、田んぼに落ちたりしたけれど。さらにはそうした極限の努力がすぐには報われず、Vリーグ申請を一度落ちたりもしたけれど。

 

 

そこから180度ともいえるような好転が、チームに訪れているのは明らかだった。

 

 

実は福智町での合宿で、選手たちは福智町のシンボル、福智山に登っている。そのルートは険しく過酷なもので、監督の森田が40分でリタイアするほどだった。だが選手たちはあきらめずに最後まで登り、頂上へとたどり着く。

 

 

想像以上の絶景を眺めて感動しながら、選手たちは誓った。

 

 

「これから絶対にVリーグに参入する!」

 

 

そしてこの頂上には、福智町を見守るように立つ、小さな神社がある。

 

 

もしかするとその神様が、選手たちの強い思いを受けとって、少しだけ、力を貸してくれたのかもしれない。そんな思いもあり、チームのマスコットキャラクター「カノ福」は、その神様をモチーフにしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

こうした出来事や諸般の事情から、チームは、『KANOA福岡」から『カノアラウレアーズ福岡』へと名前を変更した。

 

 

もともとあった「カノア」はハワイ語で「自由」だが、新たに付け加えた「ラウレア」はハワイ語で「幸福」を意味する。福岡県と福智町、そして福智山の「福」にあやかり、「ラウレア」という言葉を選んだ。

 

 

いよいよ、カノアラウレアーズ福岡は練習に集中できる基盤が整った。

 

 

練習場所があることが、ユニフォームがあることが、周囲から温かい眼差しをもらえることが、決して「当たり前」でなく、どれほどありがたいことか。

 

 

極貧で体育館の確保もままならなかった時期を、そして風評による冷たい視線を浴びてきた時期を乗り越えてきたからこそ、このチームは身にしみて知っている。

 

 

やっと少しずつ風向きが変わってきていることを、森田も、選手たちも感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

時を同じくして、天皇杯・皇后杯の九州ブロックラウンドが2022年9月18日に開催された。強豪だらけのBブロックに入り、森田は不安を抱えていた。

 

 

“Vリーグ参入目前の試合、絶対負けられへん。しかし、この Bブロックは異常なくらい強いチームばかりが集まっている。何としてでも勝たなければ……”

 

 

不安と緊張を抱える森田。だがその一方で、選手たちは「勝つ」ことだけに集中していた。

 

 

「絶対に負けられない」ではなく、「絶対勝つ」と全員が心に決めていた。そして事実、難関のBブロックを見事に勝ち抜き、東京でのファイナルラウンドへの進出を決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

目まぐるしいほどに次々とやってくる荒波を乗り越え、とうとうその日がやってくる。

 

 

2022年10月3日。

 

 

2023-24年のVリーグ申請に対して、結果通知が球団本部長 森のもとへ届く。

 

 

「──カノアラウレアーズ福岡、S3ライセンスを付与し、Vリーグ参入内定とする。」

 

 

森はすぐに森田へ電話をし、その旨を伝えた。

 

 

森田は机の下で拳を強く握りしめた。

「やった!やった!よかった。」

 

 

嬉しさももちろんあったがそれ以上に安心した。

 

 

“よかった……。”

 

 

そして、その日既にチームの練習は終わっていたため、チームのグループラインへすぐにメッセージを送った。

 

 

「おめでとうございます。君達は来年からVリーガーです。カノアV決定しました!!

本当にいろいろと苦労かけました。ここからスタートラインです。がんばろうな!!

付いてきてくれてありがとう。」

 

 

“ピコン”

 

 

携帯が鳴る。選手たちは自宅で急いで携帯を開いた。

 

 

その知らせに、選手たちは携帯を握りしめて、ぐしゃぐしゃに泣いた。

 

 

“やっと、やっとだ……”。

 

 

ゼロどころか、大きなマイナスからのスタートだったこの2年間。

 

 

長かった。苦しかった。悩んだ。特に1年前、Vリーグ入りを見送られたときは。

 

 

カノアラウレアーズ福岡、ついに、悲願のVリーグ参入を果たす。

 

 

 

 

 

 

 

 

だがもちろん、その余韻に酔っているひまはない。

 

 

Vリーグ参入はあくまで通過点であり、新たなスタートラインだ。さらなる目標は、2027年のV1リーグ参入。そしてもちろん、V1での勝利を目指して戦っていく。

 

 

でも、焦らない。

 

 

目の前の一つひとつの練習、そして一つひとつの試合を積み上げていく。これまでの経緯があるからこそ、「勝ち」に対しては誰よりも貪欲なチームだ。

 

 

「勝ちたい」

 

 

メンバーが共有するその思いを胸に、やっと望んだ舞台で、信頼するメンバーとバレーができる喜びを噛み締めながら、選手たちは今日も練習に励む。着実に前へ歩み始めたチームを前に、森田も自分の指導方法への迷いがふっきれた。

 

 

“私たちは、これでいく”。

 

 

カノアラウレアーズ福岡の勝利への道のりは、まだ始まったばかりだ。

 

 

 

 

 

 

そしてこの喜びの直後、それまでの試練を大きく超えるほどの大問題が自分たちの身に降りかかってくることを、彼女たちはまだ知らない……。

 

 

(第1部・完)

 

 

最後まで私たちのSTORYをお読みいただいた皆さま、ありがとうございました。

福岡県女子初のVリーグ入りを果たした『カノアラウレアーズ福岡』を、これからも応援よろしくお願いします!

 

(取材・構成:KANOA映画化推進委員会)

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