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【第16話】カノア、チーム存続の危機勃発!?森田、再び一文無しになる

カノアラウレアーズ福岡のVリーグ参入が内定し、森田は一人旅に出かけた。

旅というほどのものではないが、お世話になった地区をまわってみたくなった。

 

 自分一人では、何も達成できなかった。支えてくれる人がいて初めて物事が潤滑に動き始めた。旅をしながら森田は出会ったすべての人たちに感謝した。

 

 1泊2日の旅を終え、ホームタウン福智町の事務所へ戻ると部長の森が誰かと話していた。森の一つ年下の後輩にあたる福智町出身の「中村恭輔」だ。

 

 「中村さんでしたか、お久しぶりです。どうぞ、ごゆっくり。」

森田は、以前森から紹介された中村だとすぐに認識した。

 

 中村は、「ボルクバレット北九州」というフットサルチームをわずか30万円の元手資金でトップリーグ参入を成し遂げた凄腕の経営者だった。

 

バレーボールのV1に相当するF1チームの運営者に森田は、興味を引かれていた。

森は経営に関してのアドバイスは的確だったが、スポーツチームの経営経験が無かったので、そこが今後の課題だった。

 

 すると、森が口を開いた。

「今日からカノアのGM(ゼネラルマネージャー)中村くんです。」

その言葉に合わせるように中村も、

「森田監督、一緒に V1を目指しましょう。よろしくお願いします。」と笑顔を見せた。

 

 森田は、状況がつかめずにいた。森がいつも突拍子もないことをするのは日常茶飯事だが、仲間が増えることに森田は単純に心が安らいだ。

 

今回に関しては、森だけの働きかけではなく、同じ福智町出身でスポーツを盛り上げる二人にタッグを組ませようと福智町の方々の推薦もあった。

 

多くの人たちの働きかけに森田は、心が震えた。

これでホームゲームなどスポーツに関する見識者が増え、カノアの弱点は補われた。

 森は中村に、「Vリーグ昇格の記者会見準備手配するから中村くんの GM就任を同時に発表しよう。」と声をかけ、中村は「スケジュール調整します。」と即答した。

 

 森田は、その日の夜、夕食を終え早めの床に着いた。

真っ暗な天井を一点に見つめ、今の順調すぎる展開に戸惑っていた。

1年前までは、誰からも信用されず苦労しか無かった。

しかし今ではこんなに協力してくれる人たちがいる。

 

 森田は、今の状況が怖かった。

この順調な状況がずっと続くのだろうか・・・。

ひとかけらの不安が森田の頭の片隅をよぎった。

 

 

しかし、森田の悪い予感は当たってしまう・・・。

 

 

 1週間後、雇用スポンサーの支援が出来なくなるとの知らせが届く。

 

 カノアは、部長の森以外のスタッフ、選手はすべて雇用スポンサーによる支援を受けていた。選手は練習に専念でき、V1チームに相当するほどの最高の環境だった。

 

 しかし、突然の景気の変動により支援が難しい状況に陥った。

 

 森田はその知らせを聞き、血の気がひいた。

自分自身のことはどうでもいい・・・。

しかし、スタッフや選手達の生活を維持できないことに対する恐怖が頭によぎった。

 

その知らせは、実質スタッフ、選手含め無職になるという、過去最大のチーム存続の危機だった。

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