V1リーグで10年選手として活躍した男がセカンドキャリアとして選んだ道は、女子のバレーボールチームをV1で活躍させることだった。しかし、その道のりはあまりにも険しく想像を絶するものだった。この物語は、チームを立ち上げV1参入を目指す男とその仲間達が繰り広げるリアルタイムで更新される物語である。
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2014.05
【 第1話 】頂点を極めた男と、転落の始まり
ざわざわと勝利の余韻が⽴ち込める体育館のコート上で、チームメイトたちはおもむろに森⽥亜貴⽃を取り囲みはじめる。 同時に幾本もの⼿があちらこちらから伸びてきて、その体を⼀⻫に持ち上げた。 気づいたら、森⽥は宙を舞っていた。 「ワーッ!」 「ワーッ!」 体が宙に浮かぶたび、周囲では⾔葉にならない、割れんばかりの歓声があがる。⽇本⼀の勝利を祝する、そしてこの優勝をもって引退する森⽥をねぎらう、 ...この話を詳しく読む -
2020.06
【 第2話 】森田、腹を括る
当時のKANOA福岡の評判は正直、悪かった。 というのも森田に声がかかった当時、運営資金が枯渇していたのだ。 森田が球団からのオファーを受けた理由は単純だった。妻の実家が福岡にあることだった。しかし、当初の契約と違い、数回給与をもらった後はなんと無給となる。 球団運営の資金が枯渇した原因は、運営が素人であったこと。誰一人、経営のプロがいなかった。当然森田もその一人である。 森田はバレー ...この話を詳しく読む -
2020.07
【 第3話 】「福岡で、バレーやらへんか?」(1)(#10松永歩未&#2岡留倫子)
森田は福岡に来た直後から、翌年に卒業を迎える自分の教え子たちに、卒業後の進路として自分のチームに来ないか、と声をかけていた。 後にキャプテンとなるチームのムードメーカー、松永歩未もそのひとりだ。 松永は大阪で大学3年生のとき、監督として女子バレー部にやってきた森田と出会う。 ポジションは森田と同じ、ミドルブロッカー。松永は、それまで自分が受けてきた“とにかく全部止めろ ...この話を詳しく読む -
2020.07
【 第4話 】「福岡で、バレーやらへんか?」(2) (#3栗下詩子&#5三浦優&#12湊ひかり)
森田は、さらに選手の獲得に励んでいた。 そんな折、運良く神戸の大学のバレー部監督から声がかかる。 「うちの選手、よかったら森田くん預かってくれ」 それがミドルブロッカーの栗下詩子だった。 栗下はそれまでに2、3回、森田の指導を受けた経験があった。松永と同じく、森田式「考えるバレー」の楽しさを知る貴重な存在でもあった。 “これは願ってもないチャンスや。いろい ...この話を詳しく読む -
2021.03
【 第5話 】悪評のひとり歩き。そして、熊本比奈の入団
奇しくも前のメンバーが全員退団した翌月、2021年の3月から、大学卒業とともに続々と関西から森田の教え子たちが到着し、選手として森田のチームに加わりはじめた。 新しい選手たちを迎え、気を取り直して新体制をつくっていこうという時期。 心機一転、チーム名も選手を含めて意見を出し合い、『KANOA福岡』(後のカノアラウレアーズ福岡)と一新した。カノアはハワイ語で「自由」を表す ...この話を詳しく読む -
2021.05
【 第6話 】体育館がない! 田んぼに落ちる!
バレーボールのクラブチームは、V1リーグでもない限り、基本的に選手たちは一般企業に務め、日中は会社員として働きながら、それ以外の時間で練習時間を捻出している。 時は少しさかのぼり2020年の冬、森田は選手の就職先の確保に奔走していた。入団を決めた関西時代の教え子たちが、次の3月にはやって来るからだ。 文字通り、あちこちを走りまわった。普通の就職となると出張や異動などが発生するため、選手 ...この話を詳しく読む -
2021.06
【 第7話 】多額の借金。森田、貯金を切り崩す日々
チームの資金は、底をついていた。 練習着どころか、試合へ向かうときですら、揃いの移動着もない。試合にはそれぞれ、バラバラのジャージで参加していた。 スポーツジムのスポンサーが、たまたま余っているTシャツをくれたことがある。 「カノアさん、捨てる予定のTシャツがあるんですが、必要ですか?」。森田は、即答で「欲しいです!ください!」とがっついた。チームロゴも何もないけれど、揃いのTシ ...この話を詳しく読む -
2021.07
【 第8話 】福智町との出会い
そうはいっても、まだ森が手伝ってくれると決まったわけではない。ドキドキしながら面会に行くと、森はひとこと、森田にこう言った。 森:「Vリーグ参入への可能性は?」 森田:「現在、申請中です。できる限りの努力はしました」 森:「今後の課題は?」 森田:「Vリーグに参入した後には、どこかの“まち”と提携することが必要ですが、そのあてがありません」 森 ...この話を詳しく読む -
2021.09
【 第9話 】Vリーグ申請に落ちる──“ここで、辞めたら”。
2021年8月に福智町で合宿を行った後、KANOA福岡は、平日は福岡市の高校の体育館、土日は福智町の体育館、という新しいルーティーンで練習を積み重ねていた。 ようやくそんな生活にも慣れはじめた、約1か月後。 松永の「油断したらダメ」との予感が的中し、チームに最悪の通達が届く。 「Vリーグ参入、保留」 森田は頭が真っ白になり、激しい吐き気におそわれた。 正確にいうと、& ...この話を詳しく読む -
2021.11
【 第10話 】森田のバレー(1)
松永歩未と湊ひかりは、大阪の大学でバレー部監督をしていた森田のもとでバレーをしていた。 “大多数の人が見るオーソドックスなバレーの視点と、森田が見るバレーの視点は違う。人とちょっと違うところを見る。他の人が見ていない、そのポイントを突いて「仕掛ける」ことで、勝つ”。 その体験を幾度となく繰り返して、松永と湊は、森田の「“バレーの頭”がおも ...この話を詳しく読む -
2021.11
【 第11話 】森田のバレー(2)
「森田さんのバレー? え、まじわからん。なんやろ……。あー、でも、今までいろんな監督のもとでバレーしてきたけど、結構、全体に同じことをさせようとする監督って、多いと思う。指導法も伝え方も。でも森田さんは、一人ひとりに合わせて、言葉も伝え方も変えて、ひとりの人間同士として伝えてくれるというか」 熊本比奈は、森田の指導するバレーの印象をそう語る。 全員が均等に強 ...この話を詳しく読む -
2021.12
【 第12話 】小さなおにぎりと、部長加入
選手を引退後、ほとんど社会経験も積まずに経営者になってしまった森田は、毎日大きなストレスを抱えていた。 経営などやったこともない。一生関わることはないと思っていたなかで就任した、代表理事という立場。一方でお金もない。貯金を切り崩す日々のなか、限界が近づいていた。 そのころ、月に2、3度、森が練習を見に来ていた。選手の話を聞くために、昼休みの休憩中に来ることが多かった。ある日ふと、森はマ ...この話を詳しく読む -
2021.01
【 第13話 】監督と、バレーの話ができるっていいな
部長の加入が決まり、本格的にチームとしての強化が始まった。 とはいえそもそも、選手が10人にも満たないチーム。まだまだ選手が足りていなかった。 そんなとき、チームに1通のメールが届く。 「初めまして。私のプレーを見てもらえませんか?」 あるセッターの選手の動画だった。正直、あまりうまくはない。でもどこかにセンスというか、伸びしろを感じさせるような、不思議な雰囲気が感じられた ...この話を詳しく読む -
2022.01
【 第14話 】運命の助っ人
“今ここで辞めたら、きっと後悔する” “次こそは。次こそは、絶対にVリーグに上がる……!” その思いを支えに、チームに残ると決めた選手たちは、なんとか気持ちを立て直していった。新たな仲間が加入したことで、さらに士気はあがった。 そこへ追い風が吹くように、もうひとりの新メンバーが入ることになる。 ...この話を詳しく読む -
2022.03
【 第15話 】勝利へのスタートライン
こうしてチームとして、優秀、かつ曲者ともいえる選手が集結した。 そして、そんな選手たちの気持ちをいつも支え続けてくれていたのが、福智町の存在だった。Vリーグ申請の見送りとほぼ時期を同じくして、2021年の8月にフレンドリータウン協定を結んでいた福智町が、正式に「ホームタウン」となる話が出始めていた。 それはつまり、KANOA福岡の拠点を完全に福智町へ移し、選手もそのまちを拠点に ...この話を詳しく読む -
2022.10
【第16話】カノア、チーム存続の危機勃発!?森田、再び一文無しになる
カノアラウレアーズ福岡のVリーグ参入が内定し、森田は一人旅に出かけた。 旅というほどのものではないが、お世話になった地区をまわってみたくなった。 自分一人では、何も達成できなかった。支えてくれる人がいて初めて物事が潤滑に動き始めた。旅をしながら森田は出会ったすべての人たちに感謝した。 1泊2日の旅を終え、ホームタウン福智町の事務所へ戻ると部長の森が誰かと話していた。森の一つ年下の後輩 ...この話を詳しく読む -
2022.10
【第17話】残酷な現実と森田の涙
森田は雇用の件に関して、森、中村と緊急ミーティングを開いた。 「森さん、この先一体どうなってしまうんでしょうか?」 森田は不安でたまらず、森に安心できる回答を求めた。 しかし森は「今はどうすることもできませんね」と返答した。 森田は青ざめた。 もしかしたらこのままチームは崩壊してしまうのではないか・・。 せっかくVリーグ参入が決まったのも ...この話を詳しく読む -
2022.10
【第18話】選⼿の決意とカノアの進化
森⽥が練習会場へ到着すると、いつも通り選⼿たちの談笑が聞こえてきた。 楽しそうに、#11熊本と#10松永がじゃれあっている。森⽥はその笑顔を⾒るのが⾟かった。 思い返せば、2020年10⽉。森⽥は関⻄からやってくる選⼿の就職先を探すことに奮闘していた。 慣れない営業で、何⼗社と企業をまわり何度も何度も断られやっとの思いで選⼿たちの雇⽤先を⾒つけた。 ...この話を詳しく読む -
2022.10
【第19話】就職探しと内定選手取り消しの危機
#11熊本は、インスタグラムのメッセージを見た時、複雑な感情が巡った。 このメッセージがチームを救う救世主になるかもしれないし、全く的外れになるかもしれない。 選手たちに期待だけさせて、ダメだった場合選手の精神が持たない。熊本はそう判断した。熊本は、すぐに監督の森田と部長の森に相談した。 森田は、藁をもすがる思いだった。森と相談し、早急にメッセージの送り主と面談し、その後に判断すると ...この話を詳しく読む
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